
中小規模建物の省エネ課題
中小規模建物への省エネサービスの普及は、脱炭素化社会の実現に向けて重要です。従来の省エネシステムは経済性等から導入建物が限られ、建物の電力使用でウエイトの大きい空調の省エネ運用は、多くの建物で人に依存している実態にあります。
空調電力使用量の”減らす化”
空調GX「PowerPilot25」は、業務用エアコン*を対象に、空調室外機の出力リミッターのコントロールのみで快適性に影響しない電力使用量を削減する”減らす化”ソリューションです。
空調室外機の出力リミッターを30分サイクルで制御し、季節別や気象状況で制御モードを調整します。室温に影響しないレベルで、朝の立ち上げやピークなど急激な出力上昇を緩和し、室温安定時の過剰な出力を削減します。30分あたりの電力使用量(デマンド)が減るため、自然と建物電力のピークカットにもつながります。
*対象:業務用空調(EHP)のマルチタイプ(室外機1台で複数の室内機を運転管理)
エアコン操作はこれまで通り
クラウドで制御モードを遠隔設定し、オンサイトの制御端末で常時制御するIoTシステムです。室外機への電力のインプットコンロールのみのため、エアコン製品の設定温度や風量調節などの操作性は変わらず、これまで通りご自由に調整いただけます。
後付け導入に適した設備
設備導入は、屋外の室外機に無線タイプの制御端末を取り付けるのみです。室内作業がないため、平日日中での導入施工が可能です。
・建物の規模や形状に応じて、最適な導入設備・構成を選定します。
・室外機から電源を取得するため、電源の配線工事等は不要です。
・導入工事は、建物形状や取付台数で異なりますが、1日か2日です。
省エネ効果の可視化
電力会社が設置した建物のスマートメーターからの連携データを活用し、客観性の高い取引用データで省エネ効果を可視化します。毎月の検針票や30分データの授受など煩わしいデータのやり取りも不要です。
30分間あたりの電力使用量と二酸化炭素排出量を削減する仕組みによって、建物のピークデマンドも自然と削減されます。これまでの実証試験では、省エネ制御によって、建物の電気使用量・デマンドの気温感応度が低下し、室外機の電力消費を20-30%下げる効果が得られています。
コストダウン&脱炭素化
PowerPilot25は、コストダウンしながら脱炭素化を進めるGXモデルです。非化石化対象の電力使用量を減らし、コストダウン先行で建物の脱炭素化を支援します。
また、PowerPilot25は、負荷追従型のネガワットジェネレーターとして、都市部でもっとも導入が容易な再エネ発電所ともいえます。普及によって、地域社会の脱炭素化と電力需要構造の大きな改善が期待されます。。
*30KWのピーク削減効果(ソーラーパネル300㎡相当)が得られる建物1,000棟 への普及は、30MWの太陽光発電所に相当と試算
建物実証試験
(2022-2024)
東工大(現在、東京科学大)での研究において、一般の小規模事務所ビルを対象に空調室外機の省エネ制御の実証試験を行いました。
対象建物の電力需要の年間ピーク(2022年8月)に対して、空調室外機の省エネ制御装置を取り付け、2023年7月24日から制御を開始し、夏季ピーク時期の制御効果・影響を計測・分析しました。
2023年夏は2022年に比べ猛暑でしたが、8月の前年比較では建物電力の基本料金に影響するピークデマンドは25%削減し、使用量は夏季日中の高い料金時間帯の使用量が7%削減しました。また、省エネ制御に伴う室温上昇等の悪影響は見られず、室温影響のない省エネ制御運用が検証されました。
経過観測を続けた2024年8月実績においても2023年と同様の成果が得られ、経済効果の高いシステム・運用の有効性と安定性が確認できました。
<2023年夏季ピーク>
- 建物の1日の電力需要カーブの変化
省エネ制御によって朝と午後一のデマンドの急上昇が消失.室外機のデマンドは台形状に変化した.
- 8月の建物電力の制御前(2022)と制御後(2023)の比較
・制御によって,建物の最大デマンドの最高気温の感応度が高気温領域で変化した.
・電力カーブの急峻な上昇がなくなり,8月(2022年の年間ピーク)の最大30分デマンドは25%低下した.
- 室温(平日業務時間5分毎)の度数分布
制御前2週間(青 ),制御後2週間(赤)
建物の執務3フロアにおいて,省エネ制御よる室温上昇はみられなかった. (注)エアコンの設定温度・風量調節は自由
- 建物の1日の電力需要カーブの変化
<2024年夏季ピーク>
- 8月の前々年同月比較 (2024年8月と制御前の2022年8月)
・制御によって,建物の最大デマンドの最高気温の感応度が高気温領域で変化.2023年実証試験と同様の結果が得られた.
・2022年8月の最大30分デマンドから26%低下.2023年実証試験とほぼ同様の結果が得られた.
- 室外機出力と対応フロアの室温
※エアコンの設定温度・風量等のユーザー調整は自由
・2024年夏(東京)で最も気温が高かった7月29日(月)の室外機の出力と対応するフロアの室温の推移をグラフ化(5分毎).
・室外機の出力はサイクリックに削減されているが,業務時間中の室温は28℃以下に保たれ,執務環境への悪影響はなかった.
- 建物電力3年分のデータの分布変化(平日データ、1月1日から9月30日)
(注)2022年(緑)は制御なし、,2023年(青)は制御有無が混在, 2024年(赤)は全期間で制御.
・1日の建物最大デマンド, 使用量ともに,制御なしの2022年から,空調使用の多い高気温・低気温領域で大きく低下した.
・ピークカットだけでなく,年間を通じて省エネ効果(使用量・CO2)が得られた.
- 8月の前々年同月比較 (2024年8月と制御前の2022年8月)